10月7日(金)

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「……ミツキまでそう呼ぶのか?」 (そもそも島田くんに〝ナルシスト〟の称号を授けたの私だし) 「そういやそうだったな。……もう出さなくてもいいと思ってたけど、ミツキは〝出すべき〟派だろうな」 (うん、そうだね) 「なによ、なんなの?その……文献って」 「これ」  そう言って放り投げるように島田は1枚の紙を差し出した。  テーブルの上で真琴はそれを改める。  これは……これも論文だ。10年くらい前の。  なんだか難しそうな標題……。  そして著者は……農学部助教授、白石恵美……。  ……白石……恵美?農学部助教授? 「この論文書いた白石助教授って、もしかして……」 「今は学生課にいる白石さんだよ」 「あ……」 「古川」 「…………。」 「古川は白石さんに子どもがいるの知ってるか?」 「あ、うん、聞いたことあるよ」 「でも白石さんは未婚だ」 「…………そう……なんだ」  もう考えるまでもない。  カレコレの農学部ステージに出てきた助教授は白石さんの物語なんだ。  そしてミツキは言ってた。カレコレに出てくるエピソードは、主な運営の後悔を綴ったものだと。  だから、ほぼそのとおりのできごとがあったということなんだ。  でも白石さんが、あの白石さんが運営のひとりだなんて……。  白石さんだって憤慨してたじゃないか、カレンの騒ぎが始まったとき……。 (ここにもドラマがあるんだよ、真琴)  驚きを隠せず、それでいてなにも言えないでいる真琴にミツキが告げた。 「……いや、でも、重すぎるでしょ。このド (田中美月さんのご両親のドラマとどっちが重い?)  また言い終わる前に被せてきた。  でも、どっちが重い……か。  答えるのは容易くない。それだけは解る。
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