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「……ミツキ」
(ん?)
「結局さ、アンタがいちばん苦しめてるよね、運営を」
(……そうだね。そうなるね。純粋に高山先生の手助けをするなら別の方法もあったよ。わざわざカレコレで白石さんたちのドラマを明かす必要なんてなかった)
「許せないの?運営を」
(違う)
「……違う?」
(うん。許すもなにも、はじめから憎んでないんだよ。私は)
「でも罰は与えるワケね。過去をほじくって」
(真琴……)
他の者が見守るなか、真琴とミツキが問答をする。
口が問い、それに胸が答える……。
疲れを隠さず、それでいて静かな真琴の表情は、神託を受ける者のようだった。
その真琴の姿を見て、その場にいる皆が悟る。
もはや高山でも松下でも、あるいは白石でも愛でもなく、今ここでミツキと対峙する古川真琴こそが唯一の運営……。
最終の断を下す者だということを。
「白石さんの過去もそうだし、カレコレの他のエピソードもそう。ぜんぶアンタが晒したんでしょ。徳の特典にもあるらしい運営の自白だってそうじゃん。本人に断りなくアンタが私に見せるなら自白なんかじゃないじゃん。なんのためにそんなことすんのよ。アンタになんの権利があるってのよ。何様だか知らないけどさ」
昂る真琴の右手が左胸のミツキ……携帯電話を掴む。
激しい言葉とは裏腹に、我が胸に問う少女のような真琴の姿は神々しさを帯びていた。
(……信じるか信じないかは真琴の自由だけど)
「だけど、なに?」
(私は運営を憎んでないし、運営だった人たちも私を憎んでないよ)
「運営も?憎んでない?ミツキを?」
(うん)
「なにそれ。どんな理屈?」
(簡単に言うと、学生には自分と同じ過ちを繰り返してほしくない……。つまり、むしろ聞かせたいと思ってたんだよ)
「は?白石さんの過去とかもそうだっての?あ、そうよ、どっちがホントだか判んない理学部のハナシ、あんなヒドい話を人に聞かせたいと思ってるって?そもそも2通りのルートがあったんだからどっちかはアンタの創作じゃん」
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