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(白石さんについては……うん、そうだよ。他の人には辿ってもらいたくない道だって白石さんは言ってる。でも、悔やみきれないものもあるけど今は幸せだって)
「……話してるの?白石さんとも」
(話してるよ。あ、でも高山先生とは違って、話すようになったのは9月28日からだよ)
「じゃあ理学部のエピソードは?あれはなんなの?」
(……真琴)
「なによ」
(2通りのストーリー……。どっちも現実にあったことなんだよ。あれは)
あ、ああ……そうなのか。
ここで真琴の言葉が止まる。
(あれさ、いちばん最初のステージだから、どのチームも仲違いする前だと思ったんだ。真琴たちも理沙が別ルート選んだから知ったでしょ?両方の物語を)
「でも、あんなヒドい出来事を晒すなんて、あれも同意をもらったっての?」
(うん。片方は特定されないことを条件に、もう片方は……遺族から、ね)
つまり、すべて同意を得てからカレコレを作ったってことか。
仕事の早さは今さら驚くことじゃない。
ミツキの能力は……底知れないんだ。
すべてに答えるミツキを相手に、ここで真琴はすっかり毒を抜かれてしまった。
右手が胸から滑り落ちる。
(真琴)
「なに?」
(この際だから言っておくけど、高山先生を含めて他の運営にも〝覗き趣味〟はないよ)
「……どういうこと?」
(運営が9月28日に学生に見せたもの、あれはぜんぶ私が用意したんだ)
「つまり私のアレも、機械であるミツキしか見てないってこと?」
(そう。膨大なデータがサーバに蓄えられてたけど、その中から学生の〝イヤなもの〟だけを抽出して編集するなんて、生身の人間にできると思う?)
考えてみればそのとおりだ。
その能力もまさにスーパーコンピュータとしての真骨頂……。
アナログ作業でできることじゃない。
真琴はすっかり脱力した。
そして、それを隠すことなく真琴は高山に乞う。
「……高山先生」
「はい」
「お話は理解した……つもりです。ですが、すこし時間をください」
「わかりました。その間、私は学生が早く安全圏に入るよう働きかけます」
「ああ……はい、よろしくお願いします」
そこまで言って真琴は立ち上がり、部屋を出る。
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