10月7日(金)

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 島田にも理沙にも一瞥もくれず部屋を出た真琴は、胸からスマートフォンを取り出す。 「ミツキ」 (うん) 「どうせアンタはなんでも見えちゃうんだろうけど、次に私がアンタを呼ぶまでは黙ってて。いい?」 (いいよ)  結末は近いけど、やっぱりその前に直接会っておかなきゃいけない……。  真琴はラインを開いてメッセージを送る。  おおむね1時間後、真琴は大学近くにあるファミリーレストランにいた。 「まだ晩ごはんには早いわね」  真琴がじっと固まり考えをまとめているところに、待ち人が声をかけてきた。  そして真琴の対面の席に着く。 「ずいぶん疲れてるわね。大丈夫なの?」  真琴は無言でうなづく。  疲れきっていることは事実……。隠しようがない。 「まあいいわ。それで、私になにが聞きたいの?」  真琴は顔を上げる。  目の前にあったのは、あの頼もしい顔……。 「……お母さん」  母の表情は9月28日の夜と同じ……。  〝なんでもこい〟と顔に書いてあった。
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