10月7日(金)

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 ファミリーレストランの駐車場で母の車を見送った真琴は、またひとつ深呼吸をする。 「……ミツキ」 (……はい) 「アンタって、ホントに黒幕だよね」 (……うん) 「いったい何人に嘘つかせてんのよ」 (ごめんなさい)  ごめんなさい……か。  言い訳しないし、これはなんとなく、ホントに反省してそうだな。  でも……これだけは確認しなきゃ。 「アンタのごめんなさいが本物か試させて」 (……わかった) 「賢者って、ぜんぶで何人いたの?」  問いを投げ、真琴は目を閉じる。 (…………ふたり)  ミツキの答えを受け、真琴の目が自然と開く。 「……ホントに反省してるんだ」 (そのつもり……だよ)  そう、賢者なんてホントは愛と隊長だけで、あくまでもカレンは「カレン運営」によって維持されてたんだ。  あらかじめ運営にとって特別だった、イレギュラーな学生……。  意味合いはまったく違うけど。  よし、もういい。  ここまででいいんだ。  これ以上は、「知らなくていいこと」なんだ。  お母さんのことも……。  隊長の……罪の中身も……。  自らにそう言い聞かせながら、真琴の頬には「憐れみ」色の涙が伝っていた。 (真琴) 「ん?」 (たしかに私……罪深いけどさ、これだけは言わせて) 「なによ……あらたまって」 (真琴は〝超まこと〟が池に落ちる前に、悪くないって言ってくれたんだよ)  …………。  ああ……そうなんだ。  超法的手段で悪を捌いた〝超まこと〟は、たしかにミツキの思いが込められてたんだ。  そして、たしかに私は選んだ。  その責を問う最期の質問に〝いいえ〟を。 「……ミツキ」 (うん) 「もう辛気くさいのは終わり。カレンのことで、もう不幸はいらない」 (……ありがとう……真琴)  ミツキの心を受けとるように、真琴はポケットの中、自転車の鍵を握りしめた。
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