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その謎のウイルスは世界の中心で生まれた。
そして、急速な広がりを見せ世界を腐らせた。
かつては人に溢れ、ある種の熱気に常に侵されていた都市部は、今やその見る影もなくどうしようもなく意気消沈している。
あれだけの人間がそれぞれの目的を持って闊歩していた街から、一切動きがなくなった。
このウイルスに感染した者は皆、働く気力も遊ぶ意欲も、つまりは生きる力の何もかもを失った。
プレゼン中だった会議室は議題などどうでもいいとばかりに皆天井を仰ぎ、学校の教師は授業を放棄し、生徒達も机に突っ伏した。
家でヨガをしていた主婦は猫のポーズのまま静止、昼間から公園で酒を煽っていた中年男は酒の瓶を放り出した。
車で仕事に向かっていた者達は車中で眠り、道路の途中で動かなくなった。
電車もバスも全ての交通機関が、そして電気もガスも水道も、何もかもが止まった。
今や世界中がただただ虚ろな瞳で有り余る時間をやり過ごしているのだ。
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