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今思い返されるのは、彼の中に本当にダンデライオンの花が咲いていたのだろうか、ということだ。
結局私は最後まで半信半疑で、正直彼の話を信じたことはなかった。
いや、実在したかどうかなんて、どうでも良かったのかもしれない。
ダンデライオンの花は、彼にとってまさに牙のようなものだったのだ。
墓の前に手を合わせ、私は立ち上がった。
墓石のふちに黄色い花が咲いている。
その中の綿帽子を一つ手折って、ふぅと息を吹きかけた。
白い綿毛は、風に乗ってどこまでも飛んでいった。
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