3人が本棚に入れています
本棚に追加
福引券
親戚の家が商売をやっていて、年末・年始は超多忙だ。そのため高校生になってからは、臨時バイトとして店の手伝いに行くようになった。
去年は受験があったので休ませてもらったが、希望の大学に合格したので、今年はばっちり手伝いができる。
基本的に一昨年までとやることは変わらないので、作業に支障はまったくない。でも一つだけ、一昨年と違うことがあった。
「福引?」
「去年から始めたんだけど、なかなか好評でね。恒例にしていくつもりだよ」
色んなことを考えるものだなと感心しながら、福引券のことを教えてもらう。
福引券は二種類あって、購入金額により、一枚で福引ができる券と、十枚溜めれば福引ができる補助券を組み合わせて渡しているらしい。
基本的に、俺はレジ打ちはしないけれど、ヘルプで入ることもあるので覚えておく必要がある。
えーっと、一枚券と補助券と…ん? もう一種類あるけど何だ?
福引券は青色基調の物なのに、何やら赤い券がある。これまで見たことがないから、これも福引券だと思うのだが、どうして色が違うんだろう。
気になり、手を伸ばしたところで、おじさんが現れた。
ひょいと赤い券の束を取り、何も言わずにポケットにしまってしまう。その、見なくていい感があまりにも自然すぎて、俺は赤い券のことを聞くのをやめた。
それからの数日は目が回るような忙しさだった。でも今年は福引があり、俺はその係をやっていることが多かったので、仕事の内容的には楽しかった。
券を受け取り、くじを引いてもらって景品を渡す。物凄く高額な景品はないけれど、参加賞でも百円の金券になるので、結構いい福引なんじゃないかな。
そんなことを考えながら券を受け取っていたら、差し出された補助券の中に赤色の券が混ざっていた。
これって、さっきおじさんが持って行った奴だよな?
今まで青しか見てないけど、こっちも福引券だったんだ。でも、どうして二種類あるんだろう。というか、混ぜての使用はOKなのか?
さすがに俺では判断できず、お客さんを待たせておじさんに赤色の券のことを聞きに行く。すると、差し出した券を見るなりおじさんは顔色を変えた。
すぐに待たせていたお客さんの所へ行くと、相手を見るなりにこやかに笑い、どうぞどうぞと福引を引かせる。そしてお客さんが帰った後、俺にも同様の笑顔を向けてくる。
最初のコメントを投稿しよう!