終わらない痛み

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「カイさん、これ…」 気怠そうな顔でエイジを見上げるカイ。 手には白いビニール袋。 それを奪い取ると中を見てエイジを見上げる。 「あいつは?」 「…泣いてましたよ。」 「はあ?」 思わず立ち上がるカイ。 「いや、多分感情が高ぶって…じゃないっすか?わかんないっすけど…」 「あいつ俺の英語わかんのかよ…」 「さあ…?」 ちっ、と舌打ちをして缶ビールを取りに行くカイ。 「なんでお前が持ってくんだよ。」 「えっ?なんすか?」 「なんでもねーよ。」 苛立ちを隠さずライブハウスを出て行くカイをエイジは見送った。 階段を上りきるとライブを観に来ていたファン達に声を掛けられる。 「お疲れ様でしたー!」 「今日も最高でした!」 「また絶対ライブ来ます!」 次々と掛けられる言葉にイラついて壁にビールを投げつけた。 辺りはシンとして、もう誰もカイに声をかけなかった。 誰かの走り寄って来る足音に振り返るとエミが息を切らせてやって来る。 「カイ…待って…」 エミを一瞥して歩き出すカイの腕に絡まるエミの細い腕。 「それ、なに?」 「……」 エミの腕を解く。 「お前…もう俺に関わんな。」 「……カイ?」 歩き出すカイの背中を呆然と立ち尽くすエミが見つめていた。 「おい、あれってcBaのカイじゃねぇ?」 「あぁ本当だ。あいつにはこの前の借りがあんだよ。」 男達は顔を見合わせるとカイに走り寄る。 突然肩に腕を乗せられ睨みつけるカイ。 ポケットの小銭を握り締め男のみぞおちを殴りつけた。 「くそっ!テメェ絶対許さねーぞ!」 他の男達が一斉にカイに飛びかかる。 3人の男を相手に立ち回るが…流石に勝てなかった。 路地裏の片隅に這いつくばり、近寄って来た男を見上げる。 「カイト…お前相変わらず荒れてんなー。」 「っ、町田さん…」 カイの前にしゃがみ込む男。 「お前に近々頼みたい事があんだよ。今週中に事務所に顔出せ。」 「…はい。」 「色男が台無しだな。早く冷やせよ。」 カイの前から立ち去る男。 「っ、くそ!痛ってーなー!」
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