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「カイさん!」
「おう、エイジ。この前の金な。」
「あざーっす。」
金を数えるエイジを眺めるカイ。
「はい!丁度っす。」
「おう、呑もうぜ。」
「はいっ!」
足を崩して座り直すエイジ。
「あの…カイさん…」
エイジを見上げるカイ。
「あの子、どうゆう関係っすか?」
カイが飲みかけのビールを吹き出す。
「はあーっ?なんだエイジ気に入ったんか?」
「えっ?あっ、いや、可愛かったっすよ!可愛かったっすけど…」
言葉を濁すエイジに真顔になるカイ。
「なに。」
「いや…実は見ちゃったんすよ。」
タバコに火を灯すと訝しげにエイジを見据える。
「あの子…腕中痣だらけで、タバコの焼け跡とか腕に何個もあって…」
持っていたタバコがポロリとカイの指から転がった。
タバコを持ち直すとエイジの顔をジッと見つめた。
「なんかヤバイ男と付き合ってんじゃないっすかねー。あんな可愛いのに…」
「……そうか。」
エイジが生ビールを飲み干すとカウンターのオヤジにお代わりを頼む。
「…カイさん?」
「ん?」
「なんでマジな顔してんすか?」
「そんなことねーべ。」
エイジは取り留めのない話を始めた。
カイはそれを上の空で相槌をうっていた。
タバコを吸っては消し、吸っては消し、たちまち灰皿が山になった。
「なあ、エミ。」
洗濯物を畳みながら笑顔を向けるエミ。
「なあに?」
「あの時…俺がお前を殴った時…なんでお前俺から離れなかった?」
エミの手が止まる。
「なんでそんなこと聞くの?」
「……」
視線を洗濯物に戻すエミ。
「そんなの、好きだからに決まってるでしょ。」
「…好きだったらなんでも許せんのかよ。」
タバコの火を灰皿に押しつけると立ち上がるカイ。
「カイ!どこ行くの?」
「……」
外は冷たい雨が降っている。
傘もささずに歩き出すカイ。
空を見上げると雨粒が顔に降り注ぐ。
目を閉じて雨粒を受け止める。
それが涙なのか、雨粒なのかは…誰にもわからなかった。
カイにさえも…
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