終わらない痛み

16/32
前へ
/32ページ
次へ
いつものスーパーでコロッケを5個買った。 カイに渡されたカードをポケットから取り出す。 心臓の音が身体中に響く。 少しの緊張と高揚がリカを包む。 ライブハウスの前にはこの前と同じように色とりどりの髪の毛の革ジャンの男達がいる。 その男達が一斉にリカを見る。 わかっている…場違いなのは。 でも、約束したから… 勇気を出して階段を下りる。 階段の先のドアの前に坊主頭の男が訝しげに私を見上げた。 「チケットは?」 「あの…これ…」 カイに渡されたカードを見せる。 カードを取り上げ、私の顔をジーッと見上げる男。 私にカードを突き返す男。 「入りな。」 カードを受け取り重たいドアを開けた。 大音量の音楽が流れる空間に、床に座り込んでいる男達や大声で歌いながら踊るビール片手の男達。 お酒とタバコの香りにむせそうになる。 まるで異世界。 身体中タトゥーだらけの男が私を見上げた。 仲間と指をさして笑っている。 やっぱり…私には場違いだ。 なんだか急に恥ずかしくなってドアまで戻ったところで見覚えのある顔を見つけた。 「あれ?この前の革ジャンの子?」 「はいっ!」 「◎*▲%?」 徐々に音量を上げだした音楽のせいで良く聞こえない。 突然真っ暗になって歓声が上がる。 ステージが赤いライトで照らされ爆音が鳴ると、座っていた男達が立ち上がりステージの前に詰め寄る。 ドアからどんどん人が流れ込み、人混みに流されてフロアの真ん中辺りまで来てしまった。 後ろからも横からも前へ行こうとひしめき合う。 バランスを崩して転びそうになったところを古着屋の店員に肩を掴まれる。 「しっかり立ちな!」 「っ!」 キーーーーっと高音が鳴り響き、ギターのつん裂く様な音の波にハッとした。 始まる!!
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加