終わらない痛み

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「いらっしゃい。…って、あれ!」 「どーも…」 驚いたエイジが携帯を落とす。 「この前大丈夫だった?」 「えっ?」 「いや、泣いてたから…」 顔に熱が集まった。 「平気…」 「そっか、んなら良いんだ。あ、カイさんのお店今日休みだったでしょ。」 「そう…なの?」 「?行ってないの?えっ?!もしかして俺に会いに来たの?」 満面の笑みを浮かべるエイジに後ずさる。 「聞きたいことあって…」 「うん、なになに?俺なら彼女は募集中だぜー!」 「……」 悪いとは思ったけど、変な顔をしてしまった。 「んで、名前なんだっけ?俺聞いたっけ?」 「リカ…」 「おぅっ、可愛い名前~!」 なんだか面倒くさい人かもしれない… 「やっぱ、いい…」 「えっ?!なんで?待って待って!」 はぁ、と溜息をつく。 「カイのバンドの名前教えて欲しい。」 「へ?」 ポカンと口を開けっ放しのエイジ。 「あっ、ああ!カイさんのバンドね!カイさんのバンドは『come Back anymore』通称cBaだよ。」 「cBa?」 「この前、初めて観たんだろ?」 「うん…。」 「カッコいいだろ~!」 まるで自分のことのように誇らしげなエイジに笑顔が溢れた。 「あ、やっぱ笑うと可愛いんだ。」 「っ!」 恥ずかしくなって下を向いた。 「俺、エイジ。よろしくなっ!」 「あの…」 「ん?」 「CDとか出してるの?」 エイジはくるりと背を向けると棚を漁り始めた。 カタンと目の前にCDが差し出された。 「もしかして中毒症状?」 ふふっと笑うとエイジも笑顔だ。 「なんて歌ってるのか知りたくて…」 「あー、ごめん。それ歌詞カード無いんよ。あのバンド歌詞カード付けない主義だからさ。」 「なんて歌ってるのかわかるの?」 「わからん。」 2人で笑い出す。 「ただ、カッコいいんだ。曲も、カイさんの歌い方も。あの切ない歌声聴くと男の俺でも泣きたくなるし。」 「これ…普通のショップに売ってるの?」 「あーそれは売ってないと思うなー。貸してあげるよ。」 「本当?」 「他にも何枚かあったんだけどさー、みんな借りパクすんだよな。」 そんなに何枚もCDあるんだ…。 「あ、カイさんに頼めばすぐ手に入るよ。」
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