終わらない痛み

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いつも朝は勝手にやってくる。 閉めきったカーテンの隙間から光が差し込む。 散らかった部屋に溜息が溢れる。 もう暫く部屋を出ていない。 ただ呼吸をして、寝たり起きたりの繰り返しだけなのに…お腹も空くし、喉も渇く。 生きてるってこういうことなんだ、なんてわかったりする。 階下には母親がこたつに入ったまま眠っていた。 それを横目に見ながら冷蔵庫を開ける。 大量の缶ビールと調味料しか入っていないのを確認して玄関で靴を履く。 外に出たのは何日振りなんだっけ…。 自動販売機で緑茶を買う。 ゴトンと落ちてきた冷たいお茶を喉に流し込む。 「はぁ…」 眩しい日差しに目を細める。 近所の主婦がゴミ出しをしながら私を無言で見つめている。 その場が居心地悪くて歩き出す。 どこへ行くあてもなく、ただ歩く。 すれ違うサラリーマン、自転車で私を追い越して行く女子高生、園児を乗せた自転車の主婦。 私はいつからこの陽に当たる道を歩いてないんだっけ。 何もかもが歪んで、捻じ曲がって見えた。 泣きたいような、叫びたいような…胸の中がカーッと熱くなる不思議な衝動を抑えて空を見上げた。 「リカ?」 驚いて振り返ると同じ高校の渚が私と同じ驚いた顔で立っている。 咄嗟に顔を伏せる。 「…どうしたの?顔…」 「……」 「また…お母さんに殴られた?」 「……」 「リカ!ねぇ、誰かに相談しよう!」 自転車を放り出して私の腕を掴む渚。 「…痛い。」 「!ごめんっ…」 渚は白くて細い指をそっと離す。 「遅刻…するよ。」 来た道を引き返して歩き出す。 「リカっ!」 渚の泣きだしそうな声が胸を刺す。 耐えきれなくて走り出した。
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