終わらない痛み

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日当たりのいい道を歩くと眩暈がした。 私には眩しすぎる。 すれ違う人々も、頬を撫でるこの暖かい陽の光も。 木々がうっそうと生い茂る公園のベンチに腰掛ける。 日陰は好きだ。 パーカーのフードを目深に被り目を瞑る。 私の前を通り過ぎる人々の靴音や話し声、散歩中の犬の呼吸、色んな音を感じながら心の中では真っ黒な事を考えていた。 近所のスーパーが開店すると軽快な音楽が流れてきた。 ゆっくり立ち上がり真っ直ぐスーパーへと向かう。 お腹空いたな…。 揚げたての惣菜と焼きたてのパンがいい香りを放つ。 私はそれを思いっきり嗅いだ。 その場を離れて少し離れたパンコーナーの袋詰めのパンをポケットにしまう。 心臓が高鳴る。 ポケットに突っ込んだ手が震えてしまうのを必死で隠しながら外に出る。 「おいっ!」 突然背後から低い男の声がして身体がビクリと跳ねる。 思わず振り返ってしまったけど、全速力で走った。 背中から冷たい汗が流れるのを感じながら必死で走った。 誰かが追いかけて来る足音に恐怖を感じながらも、お腹はぐーぐーと音を立てた。 グイッと腕を掴まれ、硬く目を閉じた。 ビクビクと身体が震えて吐きそうになる。 呼吸さえもどうやるのか忘れてしまう程の緊張感の中で、腕を掴んだ人の咳き込む声。 「このっ、万引き娘!」 恐る恐る目の前の男を見上げた。 明らかにスーパーの店員ではなさそうな容姿の男に目を疑った。 目深に被ったベースボールキャップ、グレーのパーカーの上に黒い革ジャン姿の男。 「誰っ?」 驚いた顔で男は笑い出した。 「お前、万引きしといて誰とか言う?お前が名乗れや。」 ニヤリと笑った男の唇にピアスが光る。 明らかに万引きGメンとかではなさそうな男の風貌に安心したのか、またお腹がぐーっと鳴った。 男の手が突然伸びてきてパーカーのフードを取り去る。 「お前喧嘩でもしたんか?」 男の手を振り払いパーカーのフードを被りなおす。 すると男は私の手首を掴んで歩き出す。 「離せ!チンピラ!」 男は笑いながら歩き続けた。 「離せって!」 「黙れクソガキ。警察に突き出すぞ!」
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