終わらない痛み

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突然暗い路地に入るとボロい扉を開ける。 「離せっ!変態!」 「クソガキ、いい加減黙らねーとマジでお兄さんキレるよ 。」 無理やり手を引かれたまま中に連れ込まれる。 扉を開けたらいきなり地下へ続く階段。 不思議な造りの建物。 壁一面に貼られたチラシ。 階段を下り扉を開けるとそこは初めて目にする光景だった。 「なに…ここ…」 「お前ライブハウス初めてか?」 ライブ…ハウス? ガランとした空間の奥に一段高いステージがある。 ステージにはドラムとギターがあった。 男は壁側に置いてあった白くて丸いテーブルを引きずってこちらへと寄ってきた。 さっきのスーパーで買ったのか、白いビニール袋からカップ麺やおにぎり、惣菜のコロッケをテーブルに広げた。 「食っていいぞ。」 「えっ?」 「腹減ってんだろ?」 男は革ジャンをステージに放り投げると冷蔵庫から缶ビールを持って来た。 「食えよ。」 呆然と男を見上げた。 缶ビールがプシュっと音を立てた途端にぐびぐびと飲む男。 「お前いくつ?」 「……」 「まーいいや、早く食っちまえ。」 こんな状況なのにポケットからパンを取り出すと万引きしたパンに噛み付く。 ふふっと笑う男。 「ラーメン食うか?お湯沸かして来るわ。」 男は缶ビールをテーブルに置くと奥の方へ行ってしまった。 その隙にコロッケを1つ手に取りその場から逃げた。 階段を登り終え扉を閉めて改めてその建物を見上げた。 ライブ、ハウス…。 初めて知った新たな空間が新鮮で、階段も壁一面に貼られたチラシも、ガランと広いスペースもステージも不思議な興奮をもたらす。 家に着くまで、何故かずっと興奮していた。
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