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玄関を開けると母親が怒声をあげた。
無言で階段を駆け上る。
部屋に鍵がないから物を吊るす為にある突っ張り棒でドアが開かないように細工する。
こんな細工、開けようと思えば簡単に開けられてしまうんだろうな。
夜は母親の男が来る。
だから絶対に部屋から出てはいけない。
ベッドに膝を抱えて座る。
深い溜息を吐くと、これから訪れる長い夜に怯えた。
何も見ないし、何も聞こえないフリをしなければいけない。
夕方になり、階下から美味しそうな良い匂いがしたって耐えた。
私にはこの空間しか与えられていない。
ここで息を殺して目を閉じる。
「助けて…誰か…」
大きな物音で目を覚ます。
壁時計は朝5時過ぎだ。
誰かが大きな物音を立てながら階段を上がってくる。
心臓がぎゅっと軋み身体が震えた。
また呼吸法を忘れてしまう。
私の部屋のドアが蹴破られ、鍵代わりの突っ張り棒が弾かれて床に叩きつけられる音。
恐怖に身体が硬くなり、声を上げることもできない。
布団をぎゅっと握り締め心の中で叫んだ。
『助けて!!誰か…誰か…』
母親の奇声で意識が戻った。
突然掃除機で殴られた。
泣きたいのに、泣けなかった。
悔しいのに、痛いのに、黙って私は殴られ続けた。
気がつくとお昼を過ぎていた。
身体中痛くて起き上がることが難しかった。
それでも頑張って起き上がり、部屋の姿見に映る自分の姿に泣けてきた。
私はなんの為に生きているんだろう…。
もう…勘弁して下さい。
もう、お願いだから許して下さい。
生きていくのがこんなにツライなんて、私はどうしたらいいんですか?
誰か、教えて…
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