終わらない痛み

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「リカ!リカちゃん!」 重い瞼を開けると数人の大人がベッドの前に立ち尽くしている。 散らかった部屋に知った顔が1人。 彼女は叔母のマチさんだった。 傷だらけの私を優しく抱き起こすと泣きながらごめんね、ごめんねと言い続けた。 私は救われたのだろうか…この地獄から。 「救急車呼んで下さい!」 無言で部屋を出て行く大人達。 私はそれを目を細めて見ていた。 「リカちゃん、もう何も心配しなくていいからね。もう大丈夫だから。」 真っ白な病室に1人。 痣だらけの身体と、栄養失調、腕と肋骨の骨折に数週間の入院が決まった。 マチさんは毎日私に会いに来た。 申し訳なさそうな、泣き出しそうな顔で毎日私を見舞ってくれた。 母親と姉妹の彼女は目元も唇の形もそっくりで、私に恐怖感を与えた。 怯える私に謝り続ける彼女に申し訳なさが広がる。 私を助けてくれた人なのに…なんて酷い態度だろう。 でも、仕方がない。 彼女を見ると身体が勝手にガタガタと震え、吐き気を帯びる。 そんな私を見舞うのが辛くなったのか、彼女は私の病室には足を運ばなくなっていった。 退院の日が近づき久しぶりに彼女が現れた。 「リカちゃん…これからの事なんだけど…」 眉を下げて困った顔をするマチさん。 「主人とも相談したんだけど…良ければうちに来ないかな?うちなら学校も近いし、もう不憫な思いはさせないから…」 「すみません…それは…」 「遠慮なら要らないのよ!」 「…そうじゃなくて…」 マチさんが小さく溜息を吐く。 「わかってる。私の顔が姉さんに似ているのが怖いのよね。でも、あの部屋には帰りたくないでしょ?貴女はまだ未成年なんだし、1人と言う訳にはいかないの。」 唇を噛み締めるマチさんを見上げた。 「お願いだから…貴女をもう1人にはさせられないの。」
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