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歌声が聞こえる──。
お城のテラスに居並び、人の心を鎮める『凪の歌』を歌うレクイナ(祈歌師)たち。
彼らの力は絶大。これまでも幾度となく攻め入ってきた敵国の兵を、その歌声で退けてきた。
一方、背後に控えた私たちマナーテ(魔法師)の任務は攻撃ではなく、飽くまでも万が一に備えてレクイナを防御のマナ(魔法)で守る事。
今、城下の広場まで迫った敵兵は戸惑ったように足を止めている。
すると、レクイナたちの中心でソリストを務めていたルゥがハッと顔を上げた。
「──っ!? 風向きが変わった……? もう少しなのに、これじゃあ歌声が届かない。アリアン! あたしの防御はいいからマナで風向きを変えて! 声を広場に流して!」
振り返りもせずにそう言い放ち、ルゥがまた歌い始める。
「ええっ!? バカ言わないでルゥ! いくらなんでも防御なしじゃ……!」
「いいから! もうほとんどの兵の心は凪いできてる……今が大事なの。これで終わるから、お願いアリアン!」
その語気に圧されて、私が思わずルゥの防御を緩めたその時──。
ガウンッ……!
広場から一発の銃声が鳴り響いた。
「…………っ!?」
ルゥの歌が途切れる。
私の目の前で一瞬仰け反って……そのままテラスの大理石に崩折れた。
「ルゥ……?」
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