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最上君の表情が驚きの後、ニヤリと笑顔に変わった。
次の瞬間、私の身体がふわりと浮き上がって…って、え?!
教室の景色が下に見えてるんですけど!!
私をうつぶせ状で肩に乗せたままドアまで来ると、教室の中に向き直る最上君。
唖然としている女の子達に「どうやら、俺の勝ちみたい」と言うとそのまま廊下へでて中庭へと走り出した。
「…さっきの逆読みだよね?本気だよね?」
私をベンチに降ろしてからその前に胡座をかいて地べたに座る最上君。
そっと握られたその掌から体温が伝わってきて心音が軽快なリズムを刻み出した。
ぎこちなくだけど頷いた途端、最上君は満面の笑み。
「やった!」
「きゃあ!」
手を引っ張られてその腕の中に身体が落ちる。
「あー…すっげえ嬉しい。」
長い腕に包まれた事で、掌で感じていた体温が身体全体に染み渡った。
「…良かったね。賭けに勝てて。」
「あー…うん。」
ギュッと私を抱きしめている腕に力がこもった。
「…聞きたい?俺が賭けに勝ったらの条件」
「う、うん…。」
「だよね」とため息が頭に降って来る。
「…『仲井に今後一切ちょっかい出すな』。」
え…?
「ど、どうして?」
「だって、今後も仲井にこないだみたいな事が起こったら困るでしょ?
そもそも、賭けのルールで『口説いてる最中は邪魔すんな』ってしつこく言っといたのにさ…」
そっか、それで”賭けが防御策”…か。
不服そうな最上君に少し苦笑い。
『モテ男子』ならではの悩みと発想だったわけだね。
「ルールを破りたくなる気持ちはわかる。私こんなんだもん。」
「『こんなん』てどんなんだよ。俺、最高に趣味が良いって思ってるけど。」
「髪の毛焼きそばみたいにもしゃもしゃ。」
「柔らかくて触り心地が最高です。」
「そばかすだらけ」
「天パと合わせて、外国の人形みたいじゃん。俺の姉貴、そっくりな人形持ってるけど」
私にそっくりな人形って…お姉さんの趣味は大丈夫なんだろうか。
いや、それでいったら最上君もだけど。
しかも“逆読みが趣味”だもんね。
私の呟きに反応したくらいの強者。
「仲井…好き。」
抱きしめ直されて優しく静かに響いた言葉に目頭が熱くなる。
「…しまった。どうせなら逆読みで告ればよかった。」
「じゃあ…」とおでこ同士をくっつけられた次の瞬間
「“キスが欲しいかな”」
最上君の唇が自分のと重なった。
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