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最上奏は、成績優秀でスポーツ万能、程よい大きさの二重の目に少しブラウンな瞳を有していて鼻筋の通った整った顔をしている。柔和な笑顔と人当たりの良さから女子だけではなく男子からも人気があって、いわゆる『モテ男子』と言うやつで。
私みたいな存在感の薄い根暗なヤツとは一番縁が無い部類の人間だと思う。
そんな最上奏が、高3になって三ヶ月が経とうとしている今、私に話しかけるなんて。どういう風の吹き回しなんだろう。
「いつも仲井が行ってるじゃん。たまには代わるよ。」
驚いた、普通に。
人気者で常に人に囲まれている彼が、存在感が風前の灯火の様な私の行動を知っていたなんて、摩訶不思議過ぎるでしょ。
「でも俺、捨てる場所がよくわかんないや。」
それはあまり驚かない。
ゴミ箱を持っていたら、周りがそれを許さない的な?
モテ男子、最上奏なら有り得る話だよね。
「仲井、一緒に来て?」
ふと、最上奏の肩越しに見えた、女子達のつららも負ける鋭利な視線。
…無理です、あなたとゴミ捨ては。
「分別しないと捨てられないし。汚れたペットボトルも洗わないといけないから」
面倒くさいでしょ?
あなたみたいな人気者のする仕事じゃないでしょ?
諦めてゴミ箱をこっちへ渡してください。
「じゃあ尚更二人でやった方が早いじゃん。」
ええー…そんなに目を輝かせて微笑まれるとは。
「ほら行くよ」と私の腕を引っ張る最上奏に教室の中にどよめきが起こって「嘘でしょ!」「やだー!」なんて叫び声まで生まれた。
…最悪だ。私、もう教室には戻れない。
昇降口に向かって歩けば歩く程、人の視線が増えて行く。
そりゃそうだよ。
最上奏に腕を引っ張られて廊下を歩くなんて最高に目立つに決まっている。
「…あの。腕を放してください。」
「ああ、ごめん。あのまま話してても仲井、絶対譲らなそうだったから。」
人懐っこい笑顔が向けられて、思わず眉間にシワを寄せた。
そんなの私なんかに向けてどうするのよ、勿体ない。
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