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◇
最上奏の笑顔に警戒しながら洗ったペットボトルを持って行ったゴミ捨て場。今日も用務員さんが大量の混合ゴミと一人で戦っていた。
「お疲れ、志保ちゃん!ゴミを預かるよ。」
「すみません、牛乳パックがそのまま捨てられていて中が濡れてしまっています。」
「本当だ。まあいいよ、大丈夫!」
軍手をはめたままの手で無精髭を触りながら、はっはっは!と豪快に笑う用務員さん。
「お疲れ、おじさん。」
「おっ!奏、久しぶりじゃねーか!」
え…?
最上奏が私を見て、楽しそうに笑う。
「もう高3だしね。さすがにゴミ捨て場位は知ってる。」
『知らない』は嘘…何で?
でもいいや、ともあれ関わりたくないから流そう。
「最上さん、私はここで用務員さんを手伝って行きますので。」
最上奏が二重の目をぱちくりさせて、少し小首を傾げた。
「仲井、本当に毎日の様にこんな事してんだね。」
…“こんな事”って。
ゴミを分別するのはこの地球においてとても重要なお仕事だって私は用務員さんを尊敬していますけど、それが何か。
最上奏が私の行動をまたもや知っていた不思議よりも、怒りが上回った。
「やっていますよ?趣味みたいなものなので。」
「趣味…ね。」と含み笑いをする最上奏に背を向けてゴミの分別を開始する。
別にどう思われようと構わない。『変なヤツ』と金輪際話しかけてこなければそれが一番だし。
…と、思っていたのに。
ゴミ箱を持って消えたはずの最上奏は再び現れた。
「ゴミ箱は教室に戻しておいたから。」
驚いている私にまた無駄に笑顔を向けながら軍手をはめる。
「どう分別するのか教えて?」
…一体、今日は何なんだろう。
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