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◇
掃除の終了時刻が近づいた所で用務員さんに挨拶をして、ゴミ集積所から中庭へと二人で移動してきた。
「やってみると分別も確かに面白いかも。」
ベンチに腰を下ろして缶ジュースのプルタブを開ける最上奏。
その前に恐る恐る立つ私。
「そんなに警戒しないでよ。ただ、仲井とちょっと話がしたかっただけだからさ。」
最上奏が…私なんかと?
『ゴミ捨て場を知らない』と嘘をついて、ゴミの分別を手伝ってまで?
警戒をより強め、首を傾げる私に、最上奏が面白そうに少し挑発的な笑顔を浮かべた。
「仲井の“趣味”、ゴミの分別の手伝いだけじゃないよね?」
梅雨の季節の湿った強めの風が二人の間を吹き去って行く。
その狭間に放たれた言葉。
「“ま、ヤジよ。いい手、杖か”ってどういう意味?」
瞬時に鼓動がドクンと強く跳ねた。
…落ち着け、私。しらを切れば良い話なんだから。
「さ、さぁ…」
曖昧に答えると「じゃあ俺が答えようか」とベンチの上に胡座をかいて座り直す最上奏。
「“帰っていいよ、邪魔”」
言葉が出ないでいる私に確信を得たのか満足そうに笑った。
「『逆読み』だよね。『てぶくろ→ろくぶて』的な。
俺さ、仲井が逆読み言葉を呟いてるのを何度か聞いてるんだよ、今日だけじゃなくて。」
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