第四章 南国と楽園

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「そして、海に入らないように閉じ込められた者がいて、すると、 最後は消えたとか」  時季によると、皆が皆、同じ事を言ったという。  黒い海、何かひっかかる。 不老、 シェリエに生まれているので、何とも言えないが、 俺は時季と響紀と一緒に時を重ねて生きたい。  時季など、年々、俺を子供扱いするようになった。 響紀も、かなり甘くなった。 でも、ずっと同等でいたい。 「袈裟丸、御卜が心配か?亜空間で連絡してみたら?」  袈裟丸が、一人で遠くを見ていた。 「いいえ、あっちも仕事ですから、邪魔はしませんよ。 けれど、この海、どこか静かすぎませんか」  波が止んでいた。 海面が湖のように平らになった。 波が消え、波音も消えていた。
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