第六章 嵐の夜に

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「あんんん、いや……トーヤ、ゆっくり」  夜は眠るものと、トーヤは言っていなかったか。 しかし、これでは中には入れない。 俺が踵を返すと、後ろで袈裟丸が固まっていた。 「け、袈裟丸……」  袈裟丸の腕を引くと、客間へと無理やり入れる。  俺と出会う前は、 御卜は普通に女性と恋愛していた。 こうなってしまったのは、俺にも責任がある。 俺は、確かに、御卜に四羅の面影を見ていた。  若くして死んでしまった四羅。 俺は、その時、任務の怖さを思い知った。 「……俺のせいです。 御卜を、あんな体にしてしまった」  袈裟丸にも、後悔があるらしく、部屋に胡坐をかいて座ると、 顔を手で押さえていた。
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