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「袈裟丸!」
少ない光で探してみたが、どこにも袈裟丸の姿がない。
ここで流されたら、海しかないのだ。
どこにも辿り着けない。
「袈裟丸!」
俺は、波の中、袈裟丸に近寄ろうとしていた。
それを、時季が抱えて止める。
「時季、離せ!」
「ダメです、ここが限界」
仲間を助けるのに、限界なんてない。
俺が時季を振りほどくと、今度はがっちり掴まれた。
「俺は無事。
陸地側に流されたので、助かりましたよ……」
良かった。
俺が袈裟丸にハグすると、袈裟丸は時季も引き寄せていた。
「無事ですが、確かに、今動くのは無謀でした」
がははと袈裟丸が豪快に笑っていた。
船なんかよりも、袈裟丸の方が大切であった。
船は又買えばいいのだ。
でも袈裟丸には、代わりはいない。
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