第六章 嵐の夜に

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「あん、ん、うぐうう……」  俺も、どんな表情をしていいのか困る。 かつての恋人でもある人物が、今は他の男の腕の中にいる。 「まあ、気にしないよ」  やせ我慢かもしれない。  部屋に戻ると、ここが、この荒れ方ならば、 俺達の浮島など沈んでいるのではないかと、心配になった。 向こうにも船は一艘、残してきているが、 船の方が危険のような気もする。  自然災害でも、準備は常に万全を期するべきであった。  やっと、海の端に光が射し込むと、俺は、真っ先に部屋を飛び出した。 「飛んでみる」  時季が慌てて、俺の肩を掴む。
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