第六章 嵐の夜に

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「島が心配だからと、俺を船に乗せて残ったのです」  島には誰もいなかった。 「的場!」  この広い海で、一人を探す事の困難さは分かっている。 プールに落とした針を拾うよりも、困難であろう。  でも、俺がトーヤを見つめると、 トーヤは又船に立ち上がって四方を見ていた。 「頑張るから、そんなに悲しそうな顔をしないで欲しい。 大和の表情は、すごく悲しい」  トーヤは四方を見ながら、時折、俺も見ていた。 「できれば、応援して欲しいですよ」 「トーヤお願い、的場を探して。 俺は、仲間が何よりも大切……誰も、失いたくない」  トーヤが小さく、笑顔を造る。
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