第六章 嵐の夜に

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「了解。全力で探します」  もう俺は自覚していた。 きっと、御卜の件が無ければ、トーヤに惹かれていただろう。 俺よりも、海に優れた、海の人。 俺も、全力でトーヤの命を守ると誓う。  俺が服を脱ぎ捨て、海中から探そうとすると、 トーヤが腕を掴み止めていた。 「無暗に探しても見つかりません。 俺達は、海を読みます。魚を見ます。 こうやって、嵐に飲まれた人を助けます」  死者と嫌われようと、トーヤは島民を愛した。 何故、死者なのか、姿を変えないだけではない、 この特殊能力のせいでもない。 近くにいるとわかる、トーヤは死んだ菌を汗で排出していた。 それは、腐った匂いがしていた。
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