第六章 嵐の夜に

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 的場が、咳をすると、海水を履き出した。 菌は心臓を動かし始めたのだ。  俺は、的場の前で膝をついて深く詫びる。 菌は全ての細胞になりかわる。そして、的場の人生の続きを綴る。 「大和さん。 すいません、俺……死にましたか?」  的場が目を覚まして、俺を見ていた。 「ごめん、俺の責任だ。俺は、的場を殺してしまった」 「俺達の未熟さです。 同じ年の頭領代行だと、どこかで馬鹿にしていたのかもしれません。 安易に全て考えていました」  的場は、海が聞こえるようになったという。 「詫びではないけど、S級に推薦しておく。 多分、海での的場は鬼城の誰よりも優秀だろう」  でも、寿命は十年しかない。
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