第三章 君のいる島

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 曳航というよりも、ただロープで繋ぐと、櫓を漕いでゆく。 どうやって俺の位置が分かったのであろうか、 しかも、やっとここまで来たのに、 船が、又、居た場所に戻っているのではないのか。 「あの、トーヤ。俺、あの場所に用事があって」  トーヤは俺の声を聞こうとしない。 又、十五時間かけて移動するのは、辛い。 ロープを切ろうとした時、トーヤは振り返った。 「明日、あの位置に戻してやるから、大丈夫」  櫓で漕いでいるというのに、日没前に浮島に到着していた。 見ていたというのに、どうやって移動しているのか、 さっぱり分からない。 手で櫓を漕ぐだけで、このスピードが出てしまうものなのか。
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