第三章 君のいる島

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「トーヤも結婚していたの?」 「いや俺は、六番目だから。 女性と結婚できるのは、四男までだ」  兄妹というのは、同じ女性から生まれたというものらしい。 「まあ、俺は離婚されたばかりで、次の結婚は考えられないよ」  それが正直なところであった。 二十三年もの間、亜空間に居た。 そして、一週間の経過だと信じて戻った里には、 家族はもういなかった。 「……そうか」  雨が止むと、トーヤは本当に、昨日の現場に連れて行ってくれた。  それも、一時間かからずに五百キロメートルの距離を移動する。 櫓で漕いでいるだけで、どうして移動できるのか。 「響紀、俺、時速何キロで移動していたの?」 「時速六百キロあたりですね」  手漕ぎでそのスピードはないだろう。 でも、移動時の波の速さは、エンジンの比ではない。
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