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「特にさ......こいつを生んだ頃は......ふっ......」
まるで辛かった過去を想う様にしんみりと言う。
「排卵と下痢の二重苦でさ......」
「ブゥー!!!ゲハッケハッ!!ゲホォ」
僕の順応力をやすやすと突破する一撃だった。
「コッちゃん流石だねぇー」
「いやいや、素材が良かったのよ素材が!」
「イェーイ」
「イェーイ」
嬉々として手を取り合う二匹。僕には敗北感しかない。
満たされない気持ちで会計を済ませ店を出る。
店の前では二匹が僕を見送っている。ふと周りを見渡せば沢山の人、そして、その何倍もの死に物達。
そりゃあそうだ。生き物の中で言えば人類は莫大な数かもしれないが、死に物の数にかなうはずもない。
それを見て僕は完全に動物を美味しく頂ける自信がなくなってしまった。
その頃、店内では先までのテーブルを片付けた店員が大きなため息を漏らしていた。
「どうしたんだい?」
それを見た店長が話しかける。
「いえ、さっきのお客様のあとすごくテーブル汚なくて......」
それを聞いた店長は腕を組み替え、しみじみと言った。
「ふむ、やだねぇ。食べ物は粗末にしちゃいけないよ」
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