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酒を酌み交わし、負け犬の傷の舐め合いに浸り感覚を麻痺させる。タバコに溺れて命を削る。俺たちの安らぎはそんな自分を失わせる一瞬にしか存在しなかった。居酒屋をはしごして酔い覚ましに公園に出る。
「あっ!!」
ひと気の少ない公園の、小さなジャングルジムをを見て春日が目を輝かせるが、神道をちらりと見て顔を落とす。
「馬鹿っ!好きに行けよ。んな気遣いのが鬱陶しい」
神道が言うとパァと顔を輝かせた春日がジャングルジムに駆けて行く。それを見て俺たちは苦笑する。
「まったく……あいつ、いつまで経ってもガキのまんまだ」
「あぁ、でも俺が親父だったらあんなガキは嫌だね」
違いないと神道は笑い、つられる様に俺も笑った。千鳥足をごまかす様に神道の車椅子を押してジャングルジムに近づく。
「春日?」
春日はジャングルジムの頂上に腰掛けたまま空を眺めて動かない。
「どうした……うぉお!!俺たち……酔ってんのかな?」
俺はつられる様に空を見上げて言葉を失った。
「……まぁ、三軒はハシゴしたからな……でも、俺たち……同じもの……見えてるよな?」
神道も信じられない様に同意を求める。
「綺麗な星だねぇぇ」
そんな中、春日だけは、その奇跡を素直に感動していた。
見上げれば空には満点の星空。山や海どころか、旅行代理店のパンフレットでさえ見たことのない、あり得ないだろうほどに澄んだ空に浮かぶのは俺の暗記する五等星までの星座の更に倍以上の賑やかな星の瞬き。そして、獅子座流星群の十倍でも追いつかない雨の様な流星だった。
しばらく呆気に取られた後、突然春日が言った。
「ねぇ、これだけ流れ星があったら、願い事とか叶わないかな!?皆でお願いしようよ!!」
「ははは……春日って結構乙女だよな」
「あぁ、春日が女だったら俺、結婚してるわ。料理美味いし」
違いないと笑う神道とむくれる春日、本当に愉快な夜だ。
「もういいよ!俺は一人でもやるかんね!!」
「うおぃ!!危ないって!!」
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