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「なるほど......5年目にして離婚されましたか......しかも、原因は相方の心変わり......」
初老の男性は俺の話した内容を穏やかな言葉で反芻した後、沈黙を始めた。
(おいおい、黙るなよ。俺はここまで話したんだ。次はお前が語る番じゃないのか!?)
俺がそんな不満をもって数分、いや、十数分が経った頃だった。
「なるほど、通りでなかなかバスが来ない訳だ」
「は?」
予想外の言葉に俺は思わずそう叫んだ。
「うんうん、恐らくそうなのだろう。バスだけじゃない。僕もそう思う......君は自分の幸せに気付いていないだけだよ」
あいも変わらず和かに、しかし、俺にとって最も癪なことを口にするこの男性に俺は、どんな表情を向けて良いか分からなくなり、引きつったような笑みを浮かべて相槌を試みた。
「そうですか?僕にはとてもそうは思えないのですが......」
(妻の浮気で別れた。別れた今も彼女が好きだというのもあるが、離婚歴がある35歳、もう再婚もまずないだろうというのに、この男は何を言っているんだ!?)
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