神様が止まった世界

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さる機器によって生み出された命があった。 さる機器によって知性を得た生物がいた。 彼らは進化を続けた。 そしてついには己らのルーツを知るに至った。 「こんな事が世界に知れれば私たちのアイデンティティは崩壊するぞ!!」 それは当時の主要人物達にとってあまりに許容出来ない事態だった。 「いやはや、よもや我々のルーツが、宇宙人の機器を、オーパーツを神と慕い、知識の譲渡を受けていたなど……」 それはどの宗教をも覆し、そして己らの生きる意味さえ朧かす事態だった。 「それはさしたる問題ではない!一番の問題はその機器のデータにあった宇宙人の環境破壊、及び移住区開拓の歩調、それが今の我々とほとんど差異のない状況だよ」 そして、彼らは知るのが遅すぎた。 「このままでは我らも同じことを繰り返すと?」 「……その可能性が濃厚な道を歩歩んでいる事を……否定はできない」 先人の滅びを見るに、術はない。彼らはまるで自分たちの世界とばかりに開拓した星の、国の代表としてこの星の自由の頂きにいると無意識ながらに思っていた。しかし、今は違う。まるでその己らでさえ、小さな水槽の中に閉じ込められた矮小な存在であるかの様な錯覚さえ覚えた。 「……我々は知るべきでない物を知ってしまったらしい」 「……」 「……」 その日、秘密裏に一つの鉄塊が溶鉱炉へと運ばれた。溶鉱炉の主任は後に念入りに消失を確認しろと預かったそれは見たこともない貴金属で構築されていたと語るが、それが報道にさらされることはなかった。 数十年、彼らはその全てを忘れた。 そして 時代は繰り返す。 「完成しました。火星の緑化進行ロボットです。通称Martianoctopus……人工知能を搭載し、自己修正プログラムにより、数千年を自立行動出来ます。そして……」 研究員はニヤリと笑う。 「火星に知性のある生物を確認すれば、それに我々を神と刷り込むプログラムが……」 It is repeated at time......
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