怒りのマナーモード

2/2

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/181ページ
これはとある講習会での話だ。 ボランティアを学ぶ講習会に私は参加していた。 公民館みたいなとこで、参加者は20人、年齢は60歳すぎのほとんどが、 おばあちゃんだ。 講師の方は、障害施設の理事長で、「ボランティアの心構え」や 「人の幸せとはなにか」という聞くととてもしんみりと、 生き方に勇気が持てる話をしていた。 そんな最中に、その講習会室のどこからか、 ケータイのバイブレーションの音が鳴りだした。 ヴー、ヴー、と低くうなる音が鳴っている。 「るす番録音」の設定にしていないせいか、しばらくヴーヴー鳴っていた。 私は一番うしろに座っていたのだが、 あきらかに通路をまたいだ一番うしろの席のバーさまであろうことは予想がついた。 そのヴーヴー音は出るまで待つといわんばかりに、ずっと鳴っていた。 1分くらい鳴っていただろうか、気づいたのは私だけなのだろうか、 あー、長かったなと、講師の方の言葉に耳を傾けると、またヴーヴー鳴りだした。 さすがに当事者であるバーさまの隣に座っていた年老いた男性がたしなめた。 バーさまはケータイをバックから取り出し、画面を見ていた。まだヴーヴー鳴っている。 鳴っているのに、なんの処置もせず、バーさまはまたバックにしまう。 まわりは気にしていないのか、歳のせいで聞こえないのかわからないが、 私にはそのバイブの音が気になってしかたなかった。 もしかしたら、大事な緊急な用事なのではないか? 誰かが事故になったりとか? 不安が不安を呼び、なかなか講習に集中できない。 そのバーさまは素知らぬ顔をしていた。 だからマナーモードにしてるじゃないの、マナーを守っているのは私なのよ、という顔だ。 で、またヴーヴー鳴りだした。もうイライラしてくる。 これはもしかしたら、電話をかけている相手もこれは根くらべだ!  と思っているのではないだろうか。かなり長い間ヴーヴー鳴っている。 しばらくしてやみ、ホッとしたのもつかの間、またヴーヴー鳴りだした。 このしつこさ・・・ ダウンタウンの笑ってはいけないシリーズみたいになり、私は笑いをかみ殺す。 なんで電源をオフにしないのか! なんで係員は注意をしないのか! 腹が立つわ、笑ってしまうわ、腹が立つ。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加