怒りの選挙演説

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それは参議院選挙の選挙活動中のことだ。 私は母をつれて、 高原のツツジを見に行って、その帰り、途中で道の駅に立ち寄った。 天候もよく、道の駅の広い駐車場も県外車でいっぱいだった。 しかたなく、駐車場のいちばん遠いところに車をとめた。 が、そこにとある党の選挙カーがやってきて、 スタッフとおぼしき人たちもわさわさと道の駅に集まりだした。 母は「あ、あんなところに車をとめてる」と 道の駅前に、堂々ととめてる候補者の書かれた選挙カーに指をさしていった。 「演説でもはじまるのでしょ」と私はめんどうくさくいった。 あらかじめ、ワゴン車がとめるところには黒い上着を着たスタッフが待機していた。 私は道の駅に入るとき、その人たちは目立っていた。 そのスタッフたちは、 これから国政の大事な演説をする聖なるスペースに、 のほほんとした観光客の車など置かせてなるものかといわんばかりだ。 スタッフはまるで予行練習をしてたかのようにビラをてきぱきとまき始めた。 ここまではよしとしよう。 問題は道の駅での販売所の中でのことだ。 6月末のクソ暑いなか、黒い上着のスタッフ男4人が店内で、 いろいろと商品を物色していた。 おそらく、県外から応援に駆け付けた議員先生へのおみやげでも買うのだろう。 それに道の駅での演説を許してくれた駅長に「ほら、義理でも買い物しましたからね」 とでも印象付けたかったのだろう。 ただでさえ観光客が買い物を楽しんでいる中、 そんな客より、 国政にかかわってる俺たちが客だといわんばかりの黒い上着の男どもに腹が立つ。 せめて、上着くらいぬいだら? と最初のんきに思っていた私も、 その男ども4人が、 あちらへこちらへ4人の合意でなければ買い物ができないのかと思いたくなるくらい、 固まって移動する。 スタッフには、 立候補者のとりまく派手なジャンパースタッフと、 党の応援をする裏方の黒上着スタッフがいる。 こうした公の場で、 演説によって見えるものと、隠れて見えないものがある。 当初、この立候補者に票をいれるつもりだった。 が、その横柄な黒上着スタッフがにくたらしいので、 別の、今回の選挙では蚊帳の外みたいな党に入れた。 ちなみにその立候補者は落選した。
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