怒りの焼肉店

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これはある焼肉店での怒りというほどでもないが、 なんとも気まずい怒りを感じた話だ。 気まずい怒り・・・ これには実は伏線がある。 土曜日の夕方、私は母をつれて食事にでかけようと街にくりだした。 最初はうなぎでもと思っていたら、 とにかく有料駐車場がいたるとこ満車なのだ。 しかたなく、ちょっと離れた串揚げやに行ってみた。 駅前あたりは混むけど、そこから離れると若い者は来れないだろうと思っていた、 が、そこはなんと3か月前に閉店していた。 腹が立つことに、テナントのはずなのに、にぎやかな看板の数々がつけっぱなし。 入口まで行って、貼り紙で気づいたわけだ。 さらに仕方なく、チェーン店の焼肉屋に行く。 この店の前には20台ほどおける駐車スペースがあるので、車は置けるし安心だ。 と、思ったら、入口内で客が数組待っている状態だ。 しかたなく、郊外に出て、また別の派手な看板の焼肉チェーン店を発見。 かれこれ1時間もお店探しにぐるぐる回っていた。 もう夜の7時になっていた。 その店の前の駐車場には車が一台もないので、 土曜日なのに、休みかしらとおそるおそる店内に入った。 客は誰もおらず、私たち親子だけだった。 その焼肉店はファミリー層を狙っているので、 フリードリンクやフリーサラダがあり、 店内は明るく、ぴかぴかと光っていた。 店員さんも、ホールだけで若い方が3人いた。 それなりの広い焼肉店なのだ。 が、お客は、土曜日なのに、私たち二人だけ。 ウエスタン調の軽やかなBGMが、むなしさに輪をかけていた。 私たち親子は気軽な世間話ではなく、 なぜこの店には客が入らないのかを小声で議論することになってしまった。 まず、ファミリー層らしくメニューは豊富。 デザートも多い。お子様メニューで1ページ分ある。 焼肉以外の、韓国料理も多い。値段もけして高くはない。 肉質もけして悪くはない。ごく普通の肉だ。 私たちだけだと、この店のスタッフはどこか隅から監視しているようで、 どうにも落ち着かない。 そのうち夜8時ごろになり、一組の客がやってきた。 私は、これほど、 「よくぞ来てくださいました。待っておりました」と、 店長になりかわって、 すがる気持ちになるとは思わなかった。
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