怒りのいびき2

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これは私が高校生の卓球部の夏合宿の話だ。 合宿所は学校のトレーニング室2階で寝泊まりする。 女子卓球部は1・2年で10名ほどの小さな部だ。 3年生は1学期で引退した。 合宿中はOBがきて指導してくれる。 基礎トレーニング、ランニング、打ち込み、練習試合。 これを2泊3日でおこなう。 とくにランニングはつらく、高校の敷地まわりを10周する。 私は長距離はとくいだったので、先頭を走っていた。 夕方5時半となり、練習をおえ、食事をすます。 テレビはないので、みんなトランプで遊んだり、 スナックや、ジュースを飲んでおしゃべりしていた。 消灯は10時。 合宿2泊目の夜だった。 私はランニングでトップだったこともあり、即座に爆睡した。 翌朝の朝食。 前日の朝食とはうってちがい、みな無口で無表情だった。 朝食には顧問の30代の男の先生もいっしょにいた。 「えらいしずかだね、みんなどうしたの?」私はとなりのA子にいった。 「みんなあんたのせいなんだからね」A子は目もあわせてくれなかった。 「なんであたしのせいなの?」 あとでA子から話をきくと、こういうことだ。 昨晩、私はまっさきに眠りについた。 ほかのみんなは寝つけずおしゃべりをしていた。 そのうち、私はいびきをかきはじめ、 そのいびきのすごさに話が盛り上がったのだという。 あまりにうるさいので、 となりのふとんにいた部員があおむけの私の口のうえにコップをかぶせた。 コップは顔からすべり落ちもせず、いっこうにいびきがおさまらない。 みんなは寝ている私を取りかこみ、 「なかなか起きないね」と、いくつもコップを重ねては、静まるかチャレンジしていた。 さらに私の顔にスナックをのせ、なんこ乗せられるのか、 私が目をさましたら負けなどというゲームに発展していた。 そんなとき、見回りにきた顧問の先生に見つかり、どやしつけられ、 私以外の部員全員が正座で説教を30分ほどされたという。 その説教の30分間、私はひとりのんきに眠りこけ、 先生が声を荒げたタイミングに大きないびきの合いの手をいれたという。 「あのとき・・・」A子は憎々しげに私をにらんだ。 「腹が立つやら、おかしいやら・・・」 そんな話、聞くんじゃなかった。
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