怒りの肥料

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わたしの住んでいるところは田舎。 家の周りは畑や田んぼだらけのところだ。 家の前にも畑があり、この畑は別の家の畑だ。 怒りの発端は、この畑の主が、 畑の肥料として、人糞をまきちらしたことにある。 これから汚い話になるので、 なにか食べながらこれを読んでいる方は覚悟してください。 その昔、農家のトイレは別棟で、 いわゆる「とっぽん便所」ってやつが多かった。 トイレの下には肥溜めがあり、 それを桶ですくって、畑の肥料にしていた。 最近だと、衛生面が重視され、下水道工事も広範囲に行われて、 バキュームカーも見なくなってしまった昨今である。 つまり、この臭い話は下水道工事が行われた数年前のこと。 その畑の主は道をはさんだ私の同級生のお父さんである。 暖かくなった6月に、恒例の人糞まきがはじまるのだ。 6月でも7月なみに暑くなる日もあり、 風が吹き、その臭いがうっすらと見えるときがある。 臭いというよりガス地帯に私の家の近隣はさらされるのである。 学校に出かける私は、毎朝、玄関をあけるやいなや「う・・・」と、なる。 なんで私が同級生の家族のウ〇コの臭いをかがねばならないのだ! 私は母に、なんでくさいからやめてって言わないのさ、と 文句をいう。 同級生のお父さんなら、私から文句をいってもいいが、 恐ろしくカドがたつ。 それに、そのお父さんは働きもので、人格者。 この集落の長をなんどもやってきた人なので、 私の家もそのお隣も、文句をいわず、耐えた。 江戸時代の、寒さに耐え、飢えに耐えるならいざしらず、 平成の時代に、臭いを耐え続けるとは・・・ 二つの桶を棒でかついで、えっちらおっちら、畑まで やってくるのを見ると、なぜか「おつかれさまです!」と 言わざるおえない・・・ 文句でもいったもんなら、 くさい? 人は野菜を食べ、ウ〇コをするんだよ。 そのウ〇コで野菜を作る。 自然の摂理なんだよ、と説教されそうだ。 が、なんで、いい天気なのに洗濯物を外で干せないんだーっ! という、当時、どうにもならない怒りはおさまらなかった。
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