なんでこんなときに親戚がくる!

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ゆっくり寝坊の盆休み。 家族が外出して、私が家で一人きりになった。 盆休みというと、世間では、バカのひとつ覚えのように、 テレビで高校野球を見たがるが、 あんなものを、9回まで見よう! という気はさらさらない。 いつも父親が高校野球を見ていて、私はうんざりしていた。 誰もいないこんなときこそ、こども特番のアニメ映画をやっている。 一人それを独占して見られるのはうれしい。 朝ごはんは、 いつもより大盛りでナポリタンをつくろう。 めんどくさいからフライパンのまま茶の間に運び、 アニメ映画を見ながら、のんきに大盛りナポリタンを食べていた。 そんなとき、玄関のチャイムが鳴った。 なんと、ふだん10年に一度来るか来ないかの親戚がやってきた。 ハゲでぶのオヤジ夫婦と、こども二人だ。 時間は朝10時すぎ。来てはいけない時間ではない。 が、なんで、急にやってきたのか! 茶の間にフライパンのナポリタンを置きっぱなしだ。 「いやいやいや、久しぶりだねぇ、元気かい」 ハゲでぶオヤジは、玄関先でぼうぜんとしている私を横目に、 暑いねぇ、と、ずかずかと勝手に家にあがりこんだ。 私はそれこそ、顔をほころばせながら、光の速さで茶の間に入り、 先ほどの食べ残したナポリタンの入ったフライパンを、 床の間のふすまの裏に急いで隠した。 「誰もいないの?」 ハゲでぶオヤジは茶の間に我が物顔であがりこみ、 「おや? 甲子園、甲子園」と勝手にテレビを高校野球に変えた。 ハゲでぶオヤジ家族はめいめい好き放題でくつろいだ。 ハゲでぶオヤジは私の家族がいないのをいいことに座布団に寝転がり、 奥さんは勝手にお茶を沸かして飲み、 ガキどもは私のマンガ本を勝手に読んでいた。 私ときたら、一人、世間話に花を咲かせようと、 愛想笑いを浮かべ、場を盛り上げようと、どーでもいい話をしつづけた。 その時私はなれない正座をずっとしていた。 私の屈辱、怒り・・・ずっと絶えていた。 2時間後、彼らは帰った。 ああ! ナポリタンが見つからず、よかった! が、2時間後のナポリタンは冷えて、 さらに、大盛りだけに、水分がなく、 ぐったりとして、クソまずくなっていた・・・
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