喫茶店で存在感がなく怒る

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これは、とある百貨店内にある喫茶店での話。 仕事の途中で、ちょっと時間が空いたので喫茶店に立ち寄った。 その喫茶店は百貨店内とはいえ、さびれていた。 まず、店の前に古めかしいメニューサンプルがあった。 ナポリタンのフォークが宙に浮いているサンプルがあった。 机も椅子も、安い家具屋から出来合いのものを取り寄せたもの。 客は二人ほど。 店内に入って「いらっしゃいませ」の一言がないことに 嫌な予感がした。 厨房カウンターに太目のおばはんがケツを向けて 厨房に向けてなにやら話し込んでいた。 そもそも腰に白いエプロンからして、もう、アレだ。 流行らない店というのは、店員さん自身が、よくわかっていて、 こんな店なんて誰もきやしないと、決めつけている。 当然、おばはん店員はパートかアルバイトである。 私はその喫茶店でおばはんのケツをながめ、かたまった。 ドアチャイムがあればいいが、それがない。 私は客でありながら、客としておばはんに認められていないので、 中途半端な存在だ。客であって客ではない。 店員は厨房一人、おばはん一人といったところか。 とりあえず、私は客です、 お客様が通りましたよと、わざとらしく奥に進み、椅子にすわった。 が、私がおばはんの後ろを通ったにもかかわらず、 それでもおばはんはまだぺちゃくちゃ話し込んで気づかない。 奥に座ってしまったので、 大きい声で「すみませーん」と呼ぶのもなんだかはずかしい。 すでにいるお客でさえ、私に気づいているのに。 気づいて、気づかぬふりをされている・・・ これは見て見ぬふりをされるよりはずかしい・・・ 気まずい雰囲気、気まずい立場・・・ 私は立ち上がり、そのまま、今度は忍び足で、その店を出た。 こんどはへたに気づかれて無銭飲食されたと勘違いされても困る。 おばはんは相変わらずケツを向けたまま、それでも気づかない。 なんだか腹が立つ。
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