怒りのいびき

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これは会社の新年会での話だ。 それはめずらしくホテルで行われた。 温泉あり、飲んでも安心して泊まれる。 会社からすれば、飲み放題にしているので、 社員には思う存分飲んでほしいという配慮のようだ。 ただし、寝るときは複数人で1部屋。 あらかじめ寝泊り表が配られていて、私は6人での寝泊りだ。 私のような平社員は課長クラスまでがいっしょになる。 部屋には課長Aがいた。既婚者だが子供はいない。 課長Aは別の営業所の人なので、ほとんど顔を合わすことがない。 ただ、会議などで顔を合わせる程度だ。 小食で食べ物の好き嫌いがおおく、細身だ。宴会の食事もほとんど手をつけていなかった。 そのせいか神経質なオーラをはなっていた。 新年会では、 おとなしかった社員たちも、 宴会後、各部屋に遊びに行ってはさんざん騒いで飲んだりしていた。 深夜2時すぎごろ、めいめい部屋にもどって寝ることになった。 私は自分のいびきが気になって、なかなか寝つけなかった。 消灯から10分もしないうちに、新入社員B子がいびきをしはじめた。 彼女はふとりぎみの明るい子。下戸なのに酔ったように騒いでいた。 30分後、B子のいびきがすさまじいことになった。 まるで怒鳴っているかのような大音響なのだ。 「ぷすー」と鼻で息をかるくはきだして数十秒後・・・ ほっと、安心していると。 「いびきはこうやってかくものだーっ!」といわんばかりに「んっがーーっ!」 「んっがーーーっ!」「んっがーーっ!」としばらくつづいた。 そうして、疲れましたと休みます「ぷすー」と息をして静かになる。そのくりかえしだ。 が、また「んっがーーーっ!」 とはじまったところで、 「うるせーーっ!」ばふっと、音がした。どうやら課長Aが枕でB子をはたいたらしい。 B子はぷすー、ぷすーと火山がおさまったかのように思えた。 が、ものの5分もたたずに噴火する。 「あたしのいびきはとまらねぇっ!どうだっ、聞きやがれ!」というような勢いだ。 すると、課長Aはバケツに水をくんで、こともあろうかB子の顔にぶっかけた。 B子は「な、なにするんですか?」といった。 私はそこまでは覚えてる。 あとはなぜか私が爆睡してしまい、覚えていない。 なぜすぐ眠れたのだろう。
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