回転寿司での怒り

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これは今から5年ほど前、 とある回転ずしにいた、おっさんサラリーマンの怒りだ。 5年ほど前の回転ずしは、今みたいな 回転するレーンとは別の、新幹線だのリニアモーターカーみたいな、 個々の席で注文した皿を届ける装置がなかった。 その店にはタッチパネルもなく、 個別にインターホンで好きなすしを注文した。 注文されたすしには番号札があり、それは注文した席の番号で、 回転し流れてくるすし皿にまぎれてやってくる。 今から思うと、そのおっさんサラリーマンは、 その店をはじめて利用したのでは? ルールがわかっていなかったのかもしれない。 そのおっさんはスーツ姿で白髪交じり、 歳は60歳ぐらいだろうか、 私の席の5人ほど前にいた。 ことの発端は、 そのおっさんは、 私が注文した番号札のあるすし皿をとり、こともあろうに、食ってしまった。 私はしかたなく、若い女性店員さんにそのことを伝えた。、 うやうやしくその若い店員さんが、そのおっさんに伝えると、 その烈火たる怒りよう・・・ その女性店員さんの、申し訳ございません申し訳ございませんという なんとも悲痛な、押し殺した声で頭をさげた。 これはヤバい! 素知らぬふりをして私はすしをむさぼる。 一旦、事がおさまり、 そのおっさんは、いくらか落ち着き、会計のため席を立った。 さっきとは別の店員さんがやってきて皿を数えはじめた。 が、怒りが再点火した。 おそらく、私が注文した皿を数えたことで、嫌味ととらえたのかしら。 おっさんも大声を出せないと思い、小声で怒りをぶちまけた。 小声の威圧感ある怒り声は、周りの客も空気を察し、なにごとかと押し黙る。 沈黙の店内に、おちゃらけたその回転ずし店のオリジナルBGMが流れる。 店員さんは、周りを配慮してか、そのおっさんを、 奥のロビーに連れて行ったようだ。 おっさんはその店に対して、 屈辱、怒り、周りの客の唖然とした顔に屈辱、怒り、 さらに百円一皿のために屈辱、また怒りがぐるぐると、 まさに怒りの回転ずし状態だったのかもしれない。 そのおっさんサラリーマンも会社に戻ればエライ人なのかしら。 私が思うに、 安い店は、客も安い。
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