怒りの試験

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これは漢字検定2級試験の会場での怒りだ。 怒りというより、もう、かんべんしてくれよという、落ち込み、 試験なんだからさー、という開き直り、やっぱり、怒りである。 2級とはいえ、会場に来ているのは、高校生がほとんどで70人ほど。 ほんの4、5人ほど大人がいた。 私はその一人だ。 はっきりいって私は浮いていた。 試験がはじまる会場前の通路は、 なんでアンタが若者特定試験に受験すんの? あ? みたいな顔で高校生たちが私を見る。 私はスポーツシャツにハーフパンツにサンダル。 試験会場にあまりにもラフすぎる格好だ。 さて、試験場に入り、試験官が説明をしはじめた。 名前、受験番号の記載の有無、注意事項を10分ほど伝えた。 「では、あと3分ほどで試験開始です。しばらくおまちください」 緊張がはしる。 と、そんなとき後ろでわさわさ音がする。 誰か試験開始ギリギリで入ってきたようだ。 何人かが後ろを振り返る。 なんと、おじいさんだ。60歳台だ。私のななめ前に座った。 髪の毛がなんだか赤茶に染めたのか、妙な色をしている。 若作りして失敗したようだ。 そのとき試験官から試験開始が告げられた。 が、その妙な髪の毛のおじいさんのところへ試験官がやってきて、 試験の注意、答案用紙の説明を腰をかがめて再度しはじめた。 おじいさんだけに、言葉はていねいに、ゆっくりと、が小声で。 私は、まったく、のんきだなぁ・・・と思っていた。 が、そのおじいさんの周りが高校生だらけなのに、妙な風景となり、私は吹き出しそうになった。 おじいさんはやや年下のおっさん試験官の話を聞いて、うんうんうなずいている。 もう試験ははじまっているのに、まだ説明を受けている。 私は気になって気になっておじいさんを見ていた。 夏の暑い季節に黒い長袖に、黒いチョッキ。作業ズボン。 なんていう格好だ。声に出して笑いそうになる。 が、さらに下を見ると、長靴だ。 農作業を切り上げてやってきましたといわんばかりだ。 これで、私は爆笑になるところを必死でこらえた。 年末のテレビ番組でやってる、ダウンタウンの「笑ってはいけない試験会場」じゃねーんだ! と、自分の格好はさておいて、しばらく笑いをこらえていた。 静まり返った厳粛な試験で笑いをこらえるというのは、 確かに、怒りがこみあがる。
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