怒りの飲食店までの旅

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怒りの飲食店までの旅

2021 8.23 わたしは信州の上田市にすんでいる。 ついに、この市のコロナ感染者が20名をこえる事態になった。 東京が5000人を超えた影響をもろにうけた。 先月など、長野県だけで10人も感染者がいなかったのだ。 さて、話はかわり、 わたしと母は、毎週土曜日の夜は外食すると決めている。 そんなとき、わたしたちは車で20分のところの、 スペイン料理店にいく。パエリアがおいしいのだ。 ここはマスターひとりでやっている。 ひつも2、3組くらいしか客はこない。しずかで安心なのだ。 が、ここから悲劇がはじまる。 その日、その客はわたしたち親子のみだった。 店主は、今週から市の要請で営業は夜8時までとなりました、といった。 「ほんとこまりますよね。こんなに感染者がふえると・・・」 わたしたちは6時半ころ、店に着いたのでべつに時間は気にしない。 ただ、気にするのは、わたしたち親子は酒を飲む。 とくにわたしはワインをボトルで注文する。 よって、1時間では時間がたりず、 また、酒を飲んだ以上、代行を呼ばなくてはならない。 代行はいつもあいているわけではないので、 待たされることがおおい。 むしろ、店主はそのことを気にしていたのだ。 食事をおえるころの7時45分すぎ、 いつものように代行をたのんだ。 すると、どこの代行も9時すぎになるという。 たぶん、客そのものがすくないので、営業が7時8時ではなく、 9時スタートなんだとおもう。 しかたなく、店に車をおき、タクシーで帰ることにした。 翌日、バスでまた店にいき、車を取りにいくという算段だ。 そこで、翌朝、時刻表をネットでみた。バスなんて何十年ぶりだろう。 ちょっとウキウキする。 ひさびさにみるバスの運行表をみると、 1日に3本しか運行しないのか。時代だなぁとおもった。 わたしが学生のころは一時間に1本はでていた。 ところが、よくみると土日の運行表がないのだ。 なんと、わたしの住む場所の路線は、土日は運休だという。 とうぜん、きょうは日曜日。 わたしの住むところは集落30件もないド田舎。 信号も、お店もない。田んぼだらけの環境だ。 ほんらいなら、家からあるいて10分のバス停も、 べつの路線にいくには、国道まで歩かなければならない。 覚悟をきめて家をでた。国道にでるまで歩いて50分。 天候は夏。温度も30度を超えている。 わたしはてくてくと汗をかきながら歩く。 途中で家から用意したペットボトルの水をのむ。 自販機もないのだ。 国道からさらに10分、バス停までてくてく歩く。 暑い・・・。やっと、バス停。 運よく、あと15分ほどでバスがくるようだ。 暑い・・・。立っているだけで汗が吹きだす。 たぶん、わたしの体臭はアルコールくさいとおもう。 そこにバスがやっときた。バスはわたし含めて3人だけだ。 そうして20分をかけ、バスはスペイン料理店のちかくのバス停についた。 暑い・・・。 また、ここから歩くのだ。てくてく歩く。 10分後、やっとお店についた。 マスターにあいさつをし、車にのりこんだ。 ながい旅路だった。わたしにとっての夏休みの冒険だ。 マスターが悪いわけではない。 上田市が悪いわけではない。 代行運転業者が悪いわけではない。 タクシーが悪いわけではない。 バス会社が悪いわけではない。 けれど、なんだか腹がたつ、が、怒る気力もない。 わるいのはわたし。そう、わたしがわるい。
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