怒りのネットカフェ

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無職となった今、私はネットカフェ難民の気持ちがわかる。 なぜなら、サービス内容と料金を意識するようになったからだ。 これは、先輩と卓球の練習をするために、 ネットカフェの卓球コーナーを利用したときの話だ。 平日の夕方、先輩2人と私の3人で卓球をやった。 来月、卓球の大会に出るので、その練習だ。 ところが、私の家には認知症の母がいるので、 夕飯の用意をするために6時には帰らなければならない。 先輩たちに別れをつげて、私は一人、レジに向かった。 時間は夕方の5時半だ。 利用しているネットカフェの料金は1時間500円。 10分おきに100円アップしていくのである。 1時間はやったので、600円というところだろう。 いそいで帰らなきゃというところで、レジ前に一人の男性客がいた。 うしろ姿からして30歳前後だろうか。髪がボサボサで痩せている。 前かがみになって、カウンターの料金表とにらめっこしていた。 私がうしろに立っている気配も感じてくれない。 どうやら、男性は初めて利用するようだった。 スタッフに「この場合は?」と、 料金はどうなるのか、サービスはどうなるのかきいていた。 きっとこの客は私と同じ無職なんだろうな・・・と、私は半分同情した。 ビンボーのオーラが背中に青白くゆらめいていた。 が、その半分、スタッフの対応にイラついていた。 私の存在に気づいているのだから、 隣のレジに他のスタッフを呼んで、私の会計を済ませたらどうなのだ、と思った。 「わかりました」客は納得したようだった。私は安堵し、財布をだした。 すると、その男客は、通常コースにするか、 5時間コース、7時間コースにするか迷いだした。 通常コースだと1時間500円。10分おきに100円アップする。 5時間コースだと1200円。7時間コースだと1700円なのだ。 「うーん・・・」この男は、首をひねり、 歯のすきまから息を吸い「・・・100円か」とつぶやいた。 早くしないかコノヤローと、 私はレジ前に飾ってあったダーツをその男の背中に投げつけてやろうか、 という衝動にかられた。 私の利用時間が、待っている間に100円アップしたらどうすんだ! 私の100円・・・ 私はこのクソ男とスタッフのビンボーそうな顔を忘れない。
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