怒りの「あのメロディです」

2/2
前へ
/181ページ
次へ
地元の老舗レコード楽器店がつぶれ、 あげくの果てに、最近できたショッピングモールのア〇オには レコード楽器店は入っていない。(CDショップというのかな?) どうしてこうも音楽CDが売れなくなったかというと、 お年寄りが、レコード楽器店に立ち寄らなくなったのだ。 落ち着きのない派手な店内。うるさいBGM。 なによりも、 音楽知識はあっても、接客ができない若い店員のせいだと私は思う。 それは忘れもしない。怒りの「あのメロディ」事件がある。 その日、私は、車でラジオを聴いていて、いい曲にめぐりあった。 私はいい曲に出会うと、どうしてもほしくなり、メロディをなんどもつぶやき、 すぐさま、レコード店にかけこんだ。 レジカウンターにヒマそうな店員がいた。 その店員はまるで学生のような若い女性で、奇抜な髪型だ。 時代の先端をいく業種なんで、どうスか? といわんばかりの顔つきだった。 私はとりあえず、タイトルやアーティスト名はわからないので、 「たしか、こんな曲なんですが、わかりますかねぇ・・・」と、 フフフん、フフん、フフ~と、恥をしのんで、鼻歌を歌った。 店内は話が聞き取れないほど、うるさいBGMが流れていた。 「んー。もう少し聞かせてください」その店員さんは顔をしかめる。 その前に、店内のうるさいBGMはどうにかならんのか、といいたいが、 しかたなく、 フフフん、フふん、フフフんフフ~、フフフーフふん、フフフ・・・ 私は店員さんの顔を見ることができず、ななめ目線で天井を見た。 「・・・んー、そうですねぇ・・・最近の曲ですか?」 「だと思うんですけど・・・」私はサビ部分になって少し力をいれて鼻歌を歌う。 BGMがうるさいので、鼻歌にも力をこめた。 店員さんが前のめりになり、ちゃんと聴こうという姿勢を見せたので、 私もつい、ノッてしまい、フフフフン、フふんと首を揺らして歌う。 すると「・・・わかりません」と店員はいい、 「うしろでお待ちのお客様、おとなりのレジでどうぞ!」といった。 ふりかえると、いつのまにか、私のうしろには何人かの客がおり、 私は鼻歌を披露し、レジカウンターを占拠しただけの単なる迷惑客になっていた。 逃げ帰ることも忘れ、ぼうぜんと立ちつくした。 
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加