ケモノとわたしの作物争奪戦

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ケモノとわたしの作物争奪戦

2021 6月1日 わたしの家は信州上田、山のふもとの小さな集落にある。 家のまえに畑があり、その奥は竹林、川があり、その奥は山だ。 わたしが会社をやめて、いちばん生活をかえたのは畑しごと。 野菜作りは、失敗をくりかえした。 けれど、どうにかちゃんとできる作物がしぼられた。 それはカボチャ、トウモロコシ、ホウレンソウ、サツマイモである。 が、ここに問題がでてきた。 いくらきちんと野菜ができても、害獣対策がきちんとできていない。 トウモロコシはネットを張って、鳥から守った。 けれど、秋になると鹿がやってきて、作物を食べつくす。 目の前の山から、やつらはやってくる。 鹿、キツネ、野ウサギ、ハクビシン、イノシシ、キジ・・・ さらに空き家となったとなりの家は竹やぶになり、タヌキが住みついた。 これは、そんなケモノとわたしの農作物を食うか食われるかの、 壮大なるバカ試合の物語である。 一般のひとたちは鹿とかキツネとか1匹ぐらいだとおもいがちだが、 やつらは集団でやってくる。 キツネは親子だろうか5、6匹が畑の奥からでてくるとゾッとする。 鹿など、車の走る道路に、これまた4、5頭たむろする。 人間など、なに様かというような目で動かないで立っていると、こわい。 昨年の話である。 サツマイモの出来がいいので、わたしは畑の3か所に植えた。 畑の奥、つまり山側のほうに(うね)を2か所をつくり、 家にちかいメインの1か所をつくった。20本を植えた。 山側の2か所はダミー。おとりである。 ケモノ対策である。とくに鹿だ。 ここの葉っぱを食われても、家にちかいところは電灯がある。 かんたんには近寄れないだろうとおもったのだ。 それにそのダミーの葉っぱを食って腹いっぱいになればいいのだ。 サツマイモの茎は成長すると、ながくツルのようのびる。 葉っぱもわさわさとすごい量で生い茂るのである。 10月。サツマイモの収穫の時期である。 週末、掘りだしてみようとおもっていた。 なんせ、わたしはサツマイモ名人か、というくらいできがいいのだ。 スーパーで売っているヤツより3倍くらいのおおきさである。 が、そこに悲劇がおきた。 なんと、収穫3日まえ、サツマイモの葉っぱが一枚もなくなっていた。 ただの茎だけになっていたのだ。 ダミーの畝どころか、メインのところの葉っぱも。 あきらかに鹿である。きっと集団で来たとおもう。 まさかとおもっていた。はじめての出来事だ。 しかし、わたしはそんな予想も頭にいれていた。 だいじなのはサツマイモ。地中のイモさえ無事であればいいのだ。 フフフ、バカめー! もう葉っぱなんぞいらんのだ。 これで鹿はやってこない。 そうおもった。 ところが、つぎにとんでもない悲劇がおきた。 二日後、そのサツマイモの畝は穴だらけに掘りかえされていた。 収穫する前日の事件であった。 イノシシの存在をわすれていたのであった。 イノシシはとにかく鼻と前足で土をほる。イモ類が好きなのだ。 不幸中の幸いか、20本のサツマイモの茎のうち、 1本だけが食われていなかった。 その1本から大きなサツマイモが3個とれた。 なんだかイノシシのお慈悲のようである。 まるで、鹿とイノシシの連係プレーを見たような気がした。 荒れ果てた畑をぼうぜんと見ていた。わたしの負けだ・・・ そんななか、翌週、またわたしは落ち込んだ。 それは、となりの畑のおじさんからこんな話をきいた。 おじさんがいうには、 今年はめずらしくジャガイモが、 イノシシに食われずに収穫できたというのだ。 つまり、 わたしの畑を荒らしたイノシシが、 サツマイモを食って腹いっぱいになり、 となりの畑のジャガイモまで手をだせなかったのだとおもう。 そう、となりの畑にとって、 わたしの畑がダミーであり、おとりだったのだ! ガーン。 088d62fa-7dd5-499e-9c51-968dd35d2353 これがわたしの畑。ケモノ天国。やつらは奥からやってくる。
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