怒りの飼い犬ぶっ飛ばし事件

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怒りの飼い犬ぶっ飛ばし事件

2020 11月23日 わたしが中学生のころ、 わが家では犬を飼っていた。 雑種で中型くらいの茶色い毛並みをしていた。 名前をクマといった。メス犬だ。 わたしの住むところは信州上田市。山の中にある。 周辺は田んぼばかりで、車はとおらず、信号もない。 そんななかで散歩をする犬はしあわせだとおもう。 おしっこも気にせず、フンもしたい放題だ。 わたしはフンをとってビニールにいれる始末が嫌だったので、 棒を片手に、フンをしたら、土手に穴をあけ、そこに埋めていた。 ところが、このクマ、こまったことに、 フンをしてはそのフンを食べるのだ。 なので、土に埋めるときは、そのフンの食べ残しを埋めるわけである。 いまの時代、ネットがあるので、その行為をかんたんにしらべられる。 犬がフンを食べるのは「食糞」というのだそうだ。 理由として、 母犬の影響でマネをしたものであったり、 フンがおいしいという嗜好性であったり、ストレスとか空腹がある。 ある夏の暑い日の夕方。クマをつれ散歩をしていた。 ふと、クマはピタリと立ちどまり、 腰をピクピクさせ中腰になり、あごをあげた。 フンをする合図である。 目をほそめがちになり、うしろ足をふみふみしながら、 おほぉ・・・と、つぶやくような顔をする。 しおえると、そのフンのまわりをうろつく。 なめては臭いをかぎ、おもむろにフンをたべた。 口をくちゃくちゃさせながら、わたしを見あげた。 「やめろー!」わたしは両手でクマの顔をもち、吐かせようとおもった。 さすがに食中毒になるだろうとおもったのだ。 ところが、このクソ犬はなにをカン違いしたのか、 わたしが腰をかがめたことで、狂ったようによろこんだ。 ぴょんぴょんジャンプし、うしろ足だけで立ちあがり、 こともあろうか、口にウンコをふくんだまま、 わたしの顔をめがけて、なめようとおそいかかってきたのだ。 キャンッ! 山に犬の悲鳴がひびく。 クマは空中で横回転をし、 地面に伏せてブレーキのようにとまった。 つい、クマの顔を本気で横殴りしてしまったのであった。 その後、クマの食糞行為はピタリとなおった。 ただ、クマはわたしが腰をかがめるたび、おびえ、 耳をうしろにむけて、伏せをする。 いまでも、あのクマの悲鳴が耳にのこっている。
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